人間が根本的には、動物である事から、性は、公には口外しないものの、大きな関心事である。
まだ、結婚しないの?恋愛もしないの?と尋ねられる事が多くなる30代前後から、それは、個人的な悩みから、本来、守ってくれるはずの家族や親族からの圧力となり、性についてのアイデンティティが揺らぐ事となる。
また、特に、性同一性障害の場合、思春期からそのストレスに晒される事となる為、自殺のリスクが極めて高くなる。
「性同一性障害」
生物的に生まれ持った性別と精神的な性別とが、一致しない場合、上記の診断名となる。性同一性障害を持って生まれた場合、大阪での該当調査によると、自殺未遂者数が5.98倍となる。(関西看護医療大学 日高康晴講師 他の研究)
この研究において、男性は、性同一性障害の悩み、学校でのいじめ、望まないセックス、性感染症の既往歴、お金を貰ってセックスをした経験が自殺未遂に関連するとの結論を導き出している。また、女性については、学校でのいじめ、薬物の使用歴、喫煙飲酒の頻度、望まないセックスの経験、お金を貰ってセックスをした経験、自尊感情の低さが影響しているとしている。
研究結果は、予想されたものであるが、特筆すべきは、自尊感情との関係が、改めて、明確になった事である。
自尊感情の低さは、薬物や喫煙、飲酒、性逸脱に相関関係にあると考えられる為、自尊心の回復が、何より、自殺予防となると推察できる。自尊感情の回復には、アイデンティティの回復が不可欠であって、それは、社会に受け入れられる事である程度、実現できる。ただ、生物的な性とのギャップは、常に付きまとう。その矛盾をどのように受け入れるかで、アイデンティティの確立に繋がるかどうか、分かれてくると思われる。なお、アイデンティティ確立には、周りの理解に加え、障害の受容における段階を経る必要がある為、時間を要す。(障害受容の段階)
障害をも個性と捉えるならば、社会がより大きな包容力を持って、各個人を受け入れる体制が整っておれば、障害受容の段階を極端に短縮できるであろう。
障害や病気といった区分は、医学上、また、法の下での平等を実現する為の方便である為、性同一性障害と診断されたとしても、「私障がい者ではない」と否定したいのであれば、その思いを大いに尊重する。生きている以上、後ろ指を差される事はあるだろう。相手の理解不足や悪気のない言動に振り回される必要はない。あなたが、あなたとしてのアイデンティティを確立していく事が、最も重要である。
参考サイト:いのち。リスペクト。ホワイトリボンキャンペーン