書籍

 良書は、病を治すきっかけとなる。しかし、知識ばかりを身につけた所で、それを実践しなければ、宝の持ち腐れである。ここでは、良書を紹介するとともに、肝となる実践の勧めを述べる。また、育ってきた環境や性格が、一人一人違う為、こころに響く部分は、人それぞれである。真面目な人ほど、一字一句のがさまいとするが、私としては、乱読、積読をお勧めする。気が向いたときに、目次と書き出しを確認し、一つ心に感じたものがあれば、それを実践してみよう。

 

「森田療法のすべてがわかる本」

 森田療法は、私が神経症を患っていた時に、読んだ本である。森田療法は、正式に受けるとなれば、入院、入所が必要であるが、日々のしがらみの中では、そうした事もできない。森田療法は、神経症に特に有効である。その肝は、「あるがままを受け入れ、そこから行動する事」である。私の場合、視線恐怖が酷く、冷や汗や体が縮こまり、常に緊張状態に置かれていた。その症状を少しでも軽減しようとするのが、人間であるが、森田療法は、症状の根絶を目指していない。今、緊張しているんだなぁと先ずは、受け入れ、緊張している事はひとまずおいて置いて、日常生活を続けるのである。心理学的には、暴露療法に近いものであるが、繰り返し、その難局を超える事によって、「命に別状ない」という事を知っていくのである。理論で知るのではなく、行動で知る点で、メンタルヘルスの本の読み方に通じるものがある。ぜひ、緊張にとらわれている人には、一読いただきたい。

 

「薬物依存症のすべて」

 神経症の危機を脱した私であるが、その根本には、人が怖いという思いが、根強く残っていた。その際に、陥ったのが、アルコールである。アルコール依存症と診断された事もある。薬物と言って、危険ドラッグや麻薬といったものを思い浮かべる人も多いと思う。しかし、アルコールを始め、タバコ、市販薬、処方薬も薬物であって、それらには、依存症の危険がある。私もそうであったが、本人は、「何が悪いのか?」分かっていない事が多い。警察沙汰を起こすようになっては、末期である。育児や仕事が、それら薬物のせいで、上手くいかなくなってきたのならば、一度立ち止まってみる必要がある。本人は、罪悪感はあるものの、転がり落ちる人生に歯止めがかけられない状況である為、周りの気づきや支援も時には必要となってくる。薬物について、知っておく事で、転落人生の歯止めがかけられるかもしれないのであるから、安い買い物である。

 

「うつ病の事典」

 さて、アルコール依存症にまでなった私は、うつ病も同時に併発していた。アルコールは、うつを悪化させる。うつと診断されなくても、先ずは、アルコールを絶つ事が、回復への第一歩である。うつ病には、新型うつ病、双極性障害(躁うつ病)などがあるが、基本的には、通院加療が必要となる。最近は、効果の発現が早い、良い薬も出てきている事から、それらを試してみるのが良い。処方薬であっても、合う合わないといった問題が常にあるが、一剤で駄目なら、他の薬がある為、根気強く、治療に専念する事をお勧めする。うつは、意外と手ごわい魔物である。私の場合、希死念慮、自傷に至り、一日寝て過ごす事も多くなった。テレビやラジオといったものはただ煩わしく、行動範囲は極端に減った。励ます言葉すら、悪意に感じる日々であった。再々のお願いになるが、通院を恐れないでほしい。それで、誰もに人間失格の烙印を押されるわけでもないのだから。(押すとしたら、自分自身で、である)